賃貸人のいない戸建は実需価格で売られているのに対して、アパートは収益還元価格で売られているのが一般的です。
よって、土地・建物の面積が戸建ての2倍あるアパートが、戸建て価格の2倍ではなく4倍程度で売られていることが良くあります。
戸建の土地値物件とアパートの土地値物件は、将来の出口において大きな違いがありますので、特にアパートの土地値物件については注意が必要です。
将来取り壊して再度アパートを建築する場合、建築費が相応に高騰している現在、アパート供給過剰な郊外エリアにおいては、新築でもあまり高い家賃は取れないことから、既に土地を所有している状態であっても、年間家賃÷建築費の表面利回りが大して上がらず、そこにアパートを建てて儲かるか?というシミュレーション上の疑義が生じ、「アパート用地」としての価値が低くなってしまう可能性があります。
間口が広い土地で、戸建用地として近隣で分譲されている新築住宅の平米数程度に2~4区画程度に上手く割って売却出来れば良いですが、接道間口が狭い土地であれば、戸建て用地としての平米単価は下がり、アパートにしても戸建てにしても、路線価÷0.8程度の実勢価格からは下振れしてしまいます。
さらに1K10戸・家賃3万円のアパートを、入居率が70%となった時点で建て替えする場合、入居者に対して立ち退き交渉を行う必要がありますが、築古で家賃が安価なアパートの入居者の場合、金銭的に余裕がある人は少ないこともあり、立ち退き交渉が難航する可能性が高いです。
一般的に立ち退き費用は家賃の6カ月分程度のようですので、3万円×7戸×6カ月分の126万円が最低でも掛かる費用となりそうです。
さらにゴネられたり、立ち退き費用の上積みを要求されたり、高齢等の理由で次に借りることが出来る物件が無い人など、様々なケースが想定され、200万円くらいかかることも十分考えられます。
さらに最後の1,2戸のみ立ち退きが長期化した場合、残りの住戸へ募集は掛けていないことから、その期間の家賃収入は銀行返済額を大きく下回るため、持ち出しも大きくなります。
よって、数年以内に取り壊しをする前提でのアパートの価格は、以下の通りとなります。
土地の実勢価格(-間口が狭い、段差や擁壁がある、不整形を勘案)-立ち退き費用ー建物取り壊し費用
仮に路線価が8万円、実勢価格10万円/平米・200㎡の土地であれば、一応の土地値は、都内や超郊外でなければ、路線価ベースで1,600万円、実勢価格で2000万円程度となりますが、間口が狭いなどのマイナス要素が存在し仮に1,500万円とした場合、立ち退き費用200万円、アパート解体費用が300万円掛かるとすると、更地価格が1500万円、建物∔入居者付きの状態で売却する場合の相場価格は1000万円となります。
これが、特に築古の不動産投資が「ババ抜き」と言われる理由だと思います(笑)
よってアパートの場合は、よほどの好立地以外は「土地値による下支え」についてはあえてプラス評価とはせず、収益性が高ければ購入し、取り壊しの時期が来る数年以上前に、収益物件の価格高騰のタイミングで収益評価金額で売却(ババをリリース)する方が良さそうです。
RCや重量鉄骨であれば、なおさらです。
実際に収益物件サイトを見ていると、築30年超えの郊外アパートを、何とか利回り10%~12%程度で売り抜けようとしている投資家の姿が垣間見えます(笑)
逆に戸建てはシンプルです。
アパート用地としては収益性が見込めないエリアであっても、そこに戸建てを建てて住みたいという人がいるようなエリアであれば、路線価があまり高くないエリアであっても戸建て用地として売却出来ます。
また、取り壊しのタイミングについても、建物がボロボロになっても入居者から退去したいと申し出があるまでは賃貸物件として運用し、退去が決まったタイミングで古家付きの土地として売却活動を開始すれば、立ち退き交渉も不要で、早ければ退去直後には売却が完了し、「ロスタイム」がほとんど発生しません。
戸建の方が、よほどのド田舎であったり、狭小土地・擁壁物件・再建築に難アリ物件でなければ、一定の土地値の下支えが期待出来ます。
このように素晴らしい戸建て物件に対して、アパートのように20~30年の融資を付けてくれる金融機関が無いことが残念でなりません(笑)
ワンルームマンションは、低い利回りの上、管理費・修繕積立金の支払が発生するのに、新築であれば45年融資が付く時代なのに・・・